2022年8月21日日曜日

香天集8月21日 三好広一郎、石井冴、夏礼子、砂山恵子ほか

香天集8月21日 岡田耕治 選

三好広一郎
結論の出ぬようだから西瓜切る
手品師を後ろから見る夜店かな
墓の草ていねいにぬき草の墓
蝉の背ナ柔らかくなる交尾かな

石井 冴
青筋を誇りとしたり羽抜鶏
動くもの我に寄り来る箱眼鏡
磨かれて無題の巨石鳥渡る
斜めから覗いて見ても盆灯籠

夏 礼子
マネキンの目に海を見る水着かな
情報を削除する脳汗ぬぐう
路面電車ダリの絵となる夏真昼
湯を知らず売場の隅の浮いてこい

砂山恵子
人声のせぬ八月の給湯室
先生も一緒に帰ろ盆の月
応仁の乱のにほひや大夕焼
秋だねと五人そろうて空を見る

釜田きよ子
法師蝉おのれの声に酔っており
百均で買えるいろいろ夏の物
ゆったりと曲線描く黒揚羽
夕方に並ぶクレーン晩夏光

宮下揺子 
敗戦日羊の群れを俯瞰する
世を刻む古い時計や敗戦日
向日葵の溢れる国を生き続け
のうぜんの花暗鬱な空をつく

安部礼子
家になき原色をして金亀子
鋼鉄が過疎を進める秋茜
薄羽蜉蝣マタドール斃れたる
曼珠沙華鎖に代わる愛を捨て

小﨑ひろ子
複眼のかたち通路の蟬爆弾
電波塔雲が野分を告げてくる
夏列車スマホの薄き画面あり
時計にもパソコンはまり木下闇

古澤かおる
夏の雲粗大ごみ出す日の決まり
パイナップル理解できない展開図
くたくたに煮込むオクラのイタリアン
麦藁帽水やり芽かき追肥にも

楽沙千子
文豪の館の涼しハーブティ
炎天へ結びなおせり靴の紐
騒音を逃れていたり蚊帳吊草
砂日傘足裏に受く直射光

嶋田 静
早朝のトマト真っ赤な気をもらう
サマードレスまじまじと見て又しまう
雨上がりの耳洗われし蝉しぐれ
夏の露靴を濡らして登りけり
*岬町小島にて。

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