2022年8月28日日曜日

香天集8月28日 谷川すみれ、加地弘子、神谷曜子ほか

香天集8月28日 岡田耕治 選

谷川すみれ
青痣の広がってゆく盆用意
放蕩を見つめていたりとろろ汁
秋の雨笛の音とも軍靴とも
桃に爪一枚ずつの光かな

加地弘子
記憶より一際高き百日紅
老医師の医院に数多蝉の穴
蝉時雨この一木をあらわにす
空蝉と草の撓りの残りけり

神谷曜子
陽の匂う茅の輪くぐりのしじまかな
体調の悪さを隠し夏椿
烏瓜遊び相手に欠かない日
終戦日のことを輪切りに話す父

河野宗子
百日紅無口になっていくところ
夕菅に会いに来ており信濃駅
真先に顔にかかりし蜘蛛の糸
朝の露今日の淡路をくっきりと

田中仁美
玄関に待てりメロンの熟し時
すててこの腹の上なり子のはしゃぐ
ワイン飲む雷鳴はまだ鳴り止まず
朝採りのきゅうりの色を絵手紙に

岡田ヨシ子
町長の音声流れ秋の暮
今日の風待っているなり草の絮
終戦日ラジオから声してきたる
秋の草記憶の中の戦闘機
*岬町小島にて。

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