2022年9月4日日曜日

香天集9月4日 渡邉美穂、森谷一成、木村博昭ほか

香天集9月4日 岡田耕治 選

渡邉美保
蘭鋳の痣美しく向きを変へ
終戦日蟻は列より逸れたがり
草に坐し風のたひらよ小鳥くる
台風の夜のトランプ遊びかな

森谷一成
天地へとろけてしまい三尺寢
夜濯ぎの紅きひとひら紛れたる
青天の一機くれよと捕虫網
眼をつむる暇もあらで展墓の蚊

木村博昭
散骨の浮かびて揺れる夜光虫
甚平は寝るふりをして起きている
三人の私が居て秋暑し
兄弟や白桃一つ匂いたる

浅海紀代子
向日葵や何を信じて天を向く
健やかな汗の一日を仕舞いおり
一人居に西瓜大きく坐りけり
蜩と残る日にちを減らしゆく 

辻井こうめ
さるすべり風のはなしを聴いてをり
サンダルの小さな爪のアートかな
白桃の皿に移すとくもりけり
素通りす阪急ホテル白木槿

牧内登志雄
品書きの墨痕新た走蕎麥
かぶりつく指の節くれ桃の汁
珈琲はロースト深め小鳥來る
目ん玉の小さく揃ふ初秋刀魚

垣内孝雄
秋夕焼はなやいでくるケーナの音
朝顔の鉢にたつぷり水を遣る
スタンプは「あて先不明」秋の雨
横町の土産に求め新豆腐

吉丸房江
がら空きの電車が走る稲の花
梅干して米寿ともあれ医者知らず
稲光浴びて来たりし香りかな
夏休み今日が最後の蝉の声

藪内静枝
夕焼の明日は晴れると空ぼてり
河原の夕刻ゆかし月見草
にじみ出てポタポタ落ちる玉の汗
夕端居ご隠居さんとゆう感じ

秋吉正子
玄関の手すり残して夏終わる
捕虫網並べて子らの来るを待つ

北岡昌子
理智院へ飛び交ってゆく赤とんぼ
夏の果天満宮から見渡せり

大里久代
稲光すぐに爆音着いてくる
膝頭突き刺すほどの暑さかな
*岬町小島にて。

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