香天集9月11日 岡田耕治 選
柴田亨
夏の月わずかにかすみゆく独歩
カラフルな遊具ばかりが陽焼けする
翡翠や捕食者として動かざる
懇ろに六つの地蔵夏終わる
三好つや子
枝豆のよき塩味と距離感と
水澄みてどこか脈打つ試験管
胸中にがちゃがちゃ棲んでいたるかな
すいっちょん照れ笑いする児の前歯
砂山恵子
蜩やモノトーンなる夕餉にも
虫集く闇を喜ぶかのやうに
月を見る地球八十億に我
落花生掘りて地球の軽くなる
中嶋飛鳥
とうとつに話は痣へ夜の秋
秋立つと坐り直して『阿部一族』
遠き日の桃の産毛と弟と
生身魂座右に経口補水液
春田真理子
一歳の半分にして実南天
初めての歯の生えてあり草青む
漆黒の睫毛をおこす青葉風
名前旗立てて次代の風薫る
北村和美
女生徒の笑いが響き稲光
うつ向きの線香花火円を描き
好物のこれさえあれば盆用意
目分量砂糖と塩と新小豆
*岬町小島にて。
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