2022年10月23日日曜日

香天集10月23日 久堀博美、夏礼子、加地弘子、中嶋飛鳥ほか

香天集10月23日 岡田耕治 選

久堀博美
芒原海の光をあふれさせ
秋茄子腹の据わりし傷の跡
爽籟や今も二階にある昔
瞑れば湯殿に届く雪の声

夏 礼子
鰯雲えんぴつ削りたくなりぬ
しばらくはここに居たしと秋桜
手づくりの郵便受や秋燕
新聞紙ひろげ石榴の秘密かな

加地弘子
種飛ばす遊びのありし草の花
零るるを見せずに積もり金木犀
葛の花たじろいでいる深さかな
竹箒仕舞う側から小鳥来る

中嶋飛鳥
弱点はおおむね後ろ牛膝
長月の郵便ポスト猫はべり
沸点の音の揶揄い秋さびし
雲と行く花の枯れたる蕎麦の阜

小崎ひろ子
出た杭の並んで秋の星座表
主人(あるじ)なき仔猫がぬくめ黒き椅子
詩となりて吹く旅先の荻の風
労働を知らない素振り秋紬

楽沙千子
田の区切りあらわれている曼珠沙華
スニーカー埋まる荒田はたはたに
手で掬う湧水甘し秋日陰
栗石をつなぐ館や竹の春

嶋田 静
裏庭をパチパチはじき胡麻を干す
稲架を組む棚田に水音聞こえくる
山粧う足の運びの軽くなり
秋灯の便りやさしき文字ばかり
大阪観光大学にて。

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