2022年10月9日日曜日

香天集10月9日 柴田亨、三好つや子、渡邉美保、釜田きよ子ほか

香天集10月9日 岡田耕治 選

柴田亨
奥大和へ嫁いだ人の豆ごはん
新茶汲む殯の森に光りあり
大地より溢れる水よ梨を噛む
街道を外れていたり大夕焼

三好つや子
新大豆ひかり混み合う笊の中
秋風は時のぬけ穴埴輪の目
蓑虫という感情の綴り方
横顔のときに哲人きりぎりす

渡邉美保
側溝を走るものあり赤のまま
勾玉のかたちにかじり栗の虫
黒葡萄だけを見てゐる幼き眼
体幹を鍛へてをりぬ稲子麿

釜田きよ子
折鶴の飛ぶときは飛ぶ秋夕焼
神無月人は白黒つけたがる
美しき国はどこかと案山子問う
宇宙より地球が良くて山装う

砂山恵子
笑ふのに理由はいらぬ新走り
秋澄みて誰も詩人になると言ふ
物理とは夢を追ふこと林檎落つ
夕空のほどけてゆけり稲雀

春田真理子
原爆の語り部迎え旱星
数かぞえ体温測る星の家
ジャムの瓶眉間に増やし星月夜
菓子買ひに銀河の駅へ行かまほし

河野宗子
鉄びんの白湯をひと飲み秋来たる
掛けられてずしりとはずむ今年米
雨あがり稲架の匂いのして来たる
百日紅コンクリートを叩きつけ

牧内登志雄
櫨紅葉草原一樹炎立つ
産土や真白の紙垂に秋の声
君といるそこを花野としたりけり
蓑虫の出るに出られぬ濁世にて
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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