2022年10月2日日曜日

香天集10月2日 玉記玉、石井冴、森谷一成、佐藤俊ほか

香天集10月2日 岡田耕治 選

玉記玉
天も地も離れ小石の涼しさよ
大花野どの鍵かざしてもひらく
覚めてゆく女体のように桐一葉
大銀杏頭骨の蓋はずれけり

石井冴
段取りの巡る胸板三尺寝
添い寝する蛇の冷たき胸乳かな
蚊喰鳥脳に詩篇もちて飛ぶ
赤信号灯りてうれし月の道

森谷一成
箱庭の赤児流してしまいけり
倍速に凭れていたり敗戦日
驚愕と哀悼の後鬼やんま
独語して鴉うなずく今朝の秋

佐藤俊
枯れすすき老人の掌に根を生やす
秋の日や縁側の刻進みだす
太陽に黒点のあり割柘榴
おけら鳴く記憶の闇を照らすごと

浅海紀代子
帰省の子草の匂いを摘みゆけり
鳳仙花夕風匂うときの来て
早早と灯を消しており秋の夜
説法に極楽見えず秋彼岸

中濱信子
蝉鳴くを二度ほど聞いてそれっきり
寝床へとつくや守宮はお出ましに
登校や大きくゆれる吾亦紅
知らぬ間に剪られてしまい吾亦紅

神谷曜子
朝曇り心のドアを開け放つ
元気だと背中が答え帰省の子
茗荷の子刻み続いている諍い
女王の帽子花野が溢れ出す

垣内孝雄
逝く秋や母の唄へる子守歌
ウクライナされど龍淵に潜む
長き夜や詩篇のごとき遺言書
秋しぐれ猫の病に向き合へる

大西英雄
地蔵からほほえみ返り彼岸花
円覚寺今を生きよと酔芙蓉
秋の空観音様の御足拭く
野仏や朱に白つづく彼岸花

藪内静枝
秋彼岸おはぎの好きな姑をもち
人生のカラーリングや秋桜
コスモスや認知の友の笑顔にて
レモンたっぷりフルーツサラダ山盛りに

吉丸房江
夕映えを満たし稲穂の金の波
風鈴よ暑かったねと箱に寝かす
一番で走るあの日の秋の空
コスモスの倒れてもなおほほえんで
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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