香天集2月5日 岡田耕治 選
渡邉美保
狐火を口に含むは遠つ祖
愛日や鳩の胸元光り合ひ
雪催組立て家具の螺子余り
鳥籠によくしゃべる鳥日脚伸ぶ
浅海紀代子
老人と呼ばる安心枇杷の花
冬霞近くの墓地を遠くして
寒の月少し一緒に歩きたし
手に残る別れの握手花柊
辻井こうめ
ハーシーチョコ少年老いる十二月
二つ三つ小事のおこり晦日蕎麦
司書の選る秘密の二冊福袋
篝火の光に応ふ冬木の芽
宮下揺子
苦しみを飲み込んでいる冬青空
近道はしない質なり花柊
出来栄えを褒め合っている冬帽子
干し柿を提げて電車を乗り換える
楽沙千子
庭の菜を摘みて俎始めかな
七種を土産としたる笑窪かな
仏壇の鉦の澄みたり年新た
毛筆と決めるこだわり初景色
嶋田 静
小鳥来て私の一日始まりぬ
秋深む兄姉妹一人ずつ
法名をたまわっている小春かな
まどろみの光の中の小春日よ
河野宗子
初夢や友と長蛇の列にいる
大寒や宅配便は朝届き
ササールの古き映画よ冬菫
ワイパーに手袋を干す日向かな
田中仁美
友からのスープが届き冬深し
どこまでもひざ掛け毛布ついてくる
ぜんざいを一人で食す神の留守
寒に入る肩甲骨を寄せており
垣内孝雄
晨朝の宝号わたる冬木立
蝋梅の香でもてなす母のあり
草青む犬に曳かるる通ひ道
ねんごろに猫の頭を撫づ実朝忌
吉丸房江
かき餅を火で焼く香り幼の日
母を恋うことの一つに白菜漬
手のひらを重ねていたる火鉢かな
葉牡丹や天の光が渦を巻き
*紀州加太にて。
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