香天集2月12日 岡田耕治 選
久堀博美
立春の玄関に箱置かれあり
思い切り躁に近づき半仙戯
春の闇加湿器の湯気吸うている
桃の日の門扉大きく開きおく
三好つや子
縞馬の縞の数式冬うらら
春を待つ蛹のあまた絵本室
定位置に戻らぬ鍵や二月来る
早春の光の素描のよう雀
砂山恵子
紙コップに握り癖ありつちぐもり
思ひ出をつぶやきながら花種蒔く
風の吹く海思ひ出す目刺かな
初蝶の門を出るまで見送りぬ
釜田きよ子
内情はとても苦しい浮寝鳥
昨日まで波と戯れ煮凝りぬ
白鳥と黒鳥と居て相寄らず
溜息をつく度雪の深くなる
楽沙千子
マイナンバー申請を待つ厚着かな
気配なき集落のあり歯朶を刈る
大寒の禊にふるう拳かな
好き嫌いなくて余生や粥柱
春田真理子
山のあり金柑の実を浮き立たす
龍の玉姫のたまはる耳飾り
亡き夫の箸を取り出す雪の花
日蓮と親鸞おがむ冬林檎
牧内登志雄
ペコちゃんの赤いリボンや春うらら
旅籠屋の屏風に残り多佳子の句
日脚伸ぶドールハウスのテラス席
千トンの硝子の海や鮫ゆうゆう
秋吉正子
鏡餅どこへも行かず誰も来ず
スポンジを替えて雑煮の椀洗う
大里久代
節料理笑顔集まる善きことも
節分の払いを受けし御札かな
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