2023年8月20日日曜日

香天集8月20日 石井冴、柴田亨、三好広一郎、加地弘子ほか

香天集8月20日 岡田耕治 選

石井 冴
あいまいな脳に吊るす鉄風鈴
子の声は上へ上へとプール開き
ほどほどに冷たき乳房心太
カブトエビ水から湧いて水濁す

柴田亨
ふるさとの何もない道炎天へ
憂愁や乾漆像を満たしたる  
八月の後ろ姿の透き通り 
この道や蝉一匹の通せんぼ

三好広一郎
盆のたびテレビは帰りを心配す
太陽と言った覚えのない向日葵
炎天の青いところがにおいけり
表札は番地のみです夏燕

加地弘子
胸に組む手を解かれし昼寝覚
水を撒く蝉は裏へと回りたる
拍手して終わる町内花火会
遊具あり花壇ありして蚊喰鳥

木村博昭
疎ましき腕の重さ明易し
西行も汲むというなる泉涸る
広島におりづるの壁八月来
白髪のジャズを奏でる夜の秋

神谷曜子
虫眼鏡借る公園の木下闇
桃選ぶ時の集中ふとおかし
大文字の払いが走り出しにけり
加速する話祇園のパフェにいて

楽沙千子
捨てきれぬ鮓桶に湯気立ちにけり
料理好き寄りて自慢の五目鮓
畦道を急ぐ喪服や秋暑し
夕端居昼のむごさを語り出す

嶋田 静
朝顔をかぞえ一日始まりぬ
自転車と平行に湧く積乱雲
凌霄花資材倉庫のかがやけり
えのころの短き影の揺れてあり

川端伸路
ふな虫は足音感じすぐにげる
かごまくらスースーとして髪ささる
ランタンが一人ぼっちの天の川
台風にとんでゆくのはプラごみだ

勝瀬啓衛門
空仰ぐラジオ体操朝曇
雨止んで涼風至る物干し場
枝豆や少し辛めの塩加減
青空や白く消え入る盆の月

川端大誠
とぼとぼと線香花火落ちてゆく

川端勇健
この花火とらの口から炎ふく
*岬町小島にて。

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