〈俳句物語〉 岡田耕治
すかんぽや学年皆んな一クラス 加地弘子
地域の高齢者を招くイベントを前に、班長は頭を悩ませていた。当初、自分たちが育てた野菜を販売する計画だったが、実家のばあばから「野菜を家まで持って帰るパワーがない」という声を聞いたからだ。班長は、野菜の販売を取りやめ、高齢者が喜ぶ「桜湯」を提供する喫茶コーナーへの変更を意を決して提案した。全学年が一クラスという小規模校では、進行中の取り組みに異を唱えるには勇気がいる。しかし、この対案はあっさり受け入れられた。
担任によると、クラス替えがなく、入学から卒業までずっと同じ顔ぶれなので、できるだけ地域の人や学校外の人との交流が大事だという。班長は、まだその意味を実感できないが、この学校を卒業したときに、こんなイベントが思い出になるだろうと感じている。
桜湯を提案した恵子によると、咲きかけた八重桜を摘み取って塩漬けにしておき、当日はそれに湯を注げばいいという。校舎の運動場沿いに植わっている八重桜を取ってもいいという校長の許可が出たので、人数分を摘み取り、準備をしていった。
イベント当日、桜湯をきっかけに、班のテーブルでは、同級生の優希のおばあさんと親しく話すことができた。山菜採りの思い出話で盛り上がる中、おばあさんが学校への道にすかんぽがあったと教えてくれた。おばあさんに案内してもらい、教わった通りにすかんぽの茎をポキンと折り、表面の皮をスルスルと剥くと、緑色の芯が現れた。それを口に含んで噛むと、じゅわっと酸っぱい汁が広がった。「レモンよりもワイルドや」という声が上がった。
この酸っぱさに後押しされたのか、日頃あまり発言しない秀才の博が、「食糧難の時代が来るから、今のうちに山菜の採り方と食べ方を調べて行こう」と言い出した。
班長は、いよいよわらび採り名人だった実家のばあばの出番が来ると思った。
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