2016年4月24日日曜日

香天集4月24日 谷川すみれ、澤本祐子ほか

香天集4月24日 岡田耕治 選

谷川すみれ
おとなしく掬われている金魚かな
紫陽花を握りしめたるあと残る
原色のあふれていたり夏休
夏休夕日机を大きくす

澤本祐子
さくら草庭を包みし風の音
三月のバイクきらりと手紙くる
待つことを一つ増やして種を蒔く
白木蓮目印として愛されて

加地弘子
春炬燵祖母の見解通りけり
今生の桜の中の桜かな
会うために私からゆく朧の夜
大根の花たっぷりと水をさし

宮下揺子
口火切る時を伺う花こぶし
しもつかれ父の背中を想い出し
きれぎれの夢を見ており明易し
恩師より届く自叙伝春隣

北川柊斗
暁光の透かして清き桜かな
花吹雪ぬけ来し風にある色香
しきりなる落花のそとを俗の風
一陣の風に波打つ花筵

永田 文
せせらぎに息をこぼして花筏
山の端をしずるひかりや山桜
柔らかな入日を入れて遠ざくら
余韻まだくすぐってくる朧月

村上青女
犬ふぐり今年の色を聞いてみる
花吹雪女人二人が真っ直ぐに
巡り来て腰降ろす石花の下
花筏寄せては散らす風のあり

西嶋豊子
人の無き家満開の桜かな
春炬燵片付けもせぬ足のあり
妣の湯呑思わぬほどに熱くして
葉桜や人影のなき時の来て

安部礼子
選択という奢りのありて飛花落花
規則を破る理を知る春の月
細胞がささやく少女月日貝
陽炎や世を知らぬ日のかくれんぼ

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