中嶋飛鳥
傍らに悪友を置き水温む
エンターキー叩きて春の闇招く
履き癖を残して乾き春の泥
茎立ちて右へ右へと飛鳥川
大杉 衛
発電をする春風となりにけり
囀りはときどき反射することも
出発は靴をはくことリラの花
掲揚の国旗に沿いて揚げひばり
釜田きよ子
ミサイル来るたんぽぽの絮飛び越えて
初蝶を追いかけながら老いる人
ゆっくりと水をたのしむ花筏
野焼きして男の匂い放ちけり
浅海紀代子
算盤で通す商い日脚伸ぶ
靴磨くことに始まる花の朝
たんぽぽの広ごる自在許しおり
猫の名をさかのぼりゆく朧の夜
森谷一成
地下鉄に赤子が哭いて春来る
三月の女車掌のくさめかな
減衰の三百年を福島忌
帳尻を算えておれば春寒し
越智小泉
水鳥の視線は遥か水温む
船べりを擽りつづけ春の潮
春泥を桂馬に跳んではしゃぎけり
坐りたる程よき温さ春の土
羽畑貫治
入学式傘寿のこころ祝辞とす
ピン球に新茶を捧ぐ闘志かな
長く生きまだ使えると春日傘
鳥帰る膝から崩れいる大地
両角とみ子
ここに来て今年の梅と語り合う
鐘霞む町は眠っているような
子の姿消えて久しく桃の花
腰骨と相談しつつ畑返す
西嶋豊子
日永し遊びほうける猫のいて
長風呂となりて猫来る冬夕焼
鉢植の花に水やり水残す
大事にと犬に挨拶春の道
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