宇多喜代子『俳句と歩く』角川書店。宇多さんが俳句と俳人を見つめるまなざしは、確かでしかも温かい、そう感じさせるエッセイ集が刊行されました。掲出の句を挙げるまでに、原石鼎の人柄を短くも深く理解できるエピソードを引いておられるので、単に俳句を味わうだけでなく、原石鼎という人と作品を味わえるのです。原石鼎が波瀾万丈の生活の果てに、深吉野の自然と出会ったのかを知りますと、一匹の蝶が谷を渡っていくその「深さ」に通じていくような感覚をもつことができます。故人だけでなく、宇多さんと親交のある現代俳人が多く登場することも、一巻の厚みを感じさせる要素になっています。
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