谷川すみれ
鹿の目の奥の奥なる一つ星
白桃の衰えてゆく早さにて
これからは風のままなり破芭蕉
秋夕べ空の青さをとりもどす
橋爪隆子
八月の絶叫マシンおちてくる
ブラインドひとつねじれて熱帯夜
矢印に急かされている薄暑かな
セロファンの音が薔薇を包みゆく
澤本祐子
あじさいの大きな息を洗う雨
手のひらに乗せてつめたき雨蛙
くず籠の墨の匂いの薄暑かな
ラベンダー指先に香を移したる
加地弘子
輪郭をはっきり描き蜻蛉とぶ
蠅叩きなき家に蠅居着きたる
何もかも無駄なき刻や月下美人
蝉生まる一つ息吸い一つ吐き
浅海紀代子
いつもの川魚影次次夏来る
緑蔭に人待つための椅子のあり
青年に注がれて酔うビールにて
昼寝覚め変わらぬこの世ありにけり
0 件のコメント:
コメントを投稿