2016年9月4日日曜日

香天集9月4日 石井冴、竹村都、越智小泉ほか

香天集9月4日 岡田耕治 選

石井 冴
蝸牛つまめば時を抗いぬ
昼寝覚机の裏がよく見えて
体から頭が外れ夏休
数珠玉の漢字覚える速さかな

竹村 都
補聴器の蝉の声だけよく拾う
昼寝覚早や夕食の匂いくる
大き蛇見たと両の手広げ来る
谷水を堰止めている夏野菜

越智小泉
打水に老舗の風の生れけり
寝返るも寝返るも夜の長きかな
息かけて目鏡拭きおり広島忌
鉄棒に残るぬくもり盆踊

橋本惠美子
捩花の風と遊びて乱れけり
靴墨をたっぷりと塗り雲の峰
遠花火昇る二階の高さまで
風鈴や小さきものを招き入れ

坂原 梢
失敗のあと成功の野紺菊
盆おどり仮装行列登場す
炎天下見渡す限り要支援
一筆の黒絵としたり雲の峰

冨永道子
父の日の父嬲りたる墨絵帳
そこだけは光弾けるスベリヒユ
万歩計鼓動に重ね夏の朝
目薬の一滴暑気を吹き飛ばす

浅海紀代子
水打って今日の商い仕舞いけり
駅舎出て青田の風の故郷かな
盆明けや元に戻りし皿の数
月今宵古墳の丘の目覚めたる

森谷一成
児の脛に疵なし津島佑子逝く
熔けながら遺品となりき原爆忌
広島の午前過ぎゆく何を食わん
あやまちはくりかえすもの雲の峰

浅野千代
八月の蒼に浸してしまいけり
野分過ぎ野分の如き心かな
秋暑し絵葉書にある海と犬
みんみんと入っておりし同じ蔭

羽畑貫治
手術前三途の川の水澄めり
廃校の庭ありて蛇穴に入る
遠くから子らの声して秋時雨
後遺症の足浮かして通草食う

坂原 梢
現役を続行すると七夕竹
ひまわりの迷路にはしゃぐ声のあり
金魚鉢子どもの声に躍りけり
後とも前とも見える夏帽子

岡田ヨシ子
葉桜や海に向けたる椅子二つ
青蔦を切りて景色の変わりけり
アスファルトの熱に近づくバス降りて
バラン株生い茂りたる風涼し
*大阪教育大天王寺キャンパスの芝も秋に。

0 件のコメント:

コメントを投稿