香天集11月27日 岡田耕治 選
谷川すみれ 香天集
深山を出てきてよりの冬日向
古井戸に映るものなし寒鴉
水仙は一輪が良し悲しみも
とどまれば走り始めし寒の月
中濱信子
秋高し文字の大きな文庫本
三輪車立て掛け釣瓶落しかな
湯殿にて無防備になるいぼむしり
人見知りする子の笑みや菊日和
橋本惠美子
炎昼の如雨露が流す赤い水
夏果てる新生物を捕獲して
月光やカーブミラーが捉えたる
返信の短く届き秋の風
坂原 梢 (10月)
コンバインさびしくなりて一隅に
さりげなく白粉花を点しけり
女子ばかり集まる幸や盆の月
鈴虫に近く一夜を過ごしたる
坂原 梢 (11月)
自販機のホット現れ秋の朝
秋の空誰も乗らないヘリコプター
行き場所のなくなってゆく吊し柿
青空や紅葉の中を踏みしめて
竹村 都
酔芙蓉昔話の弾みけり
秋草の名を一つ知る散歩かな
突然に鳥居現われ朝の霧
学校の団栗残る布鞄
永田 文
凄まじくなりし羽音の稲雀
入日受け焔となりぬ箒草
運動会空垂直の声届きたる
案山子ぬく穴深くしてそのままに
古澤かおる
ダリ展のチーズせんべい秋の虹
松手入して聡しさの並びけり
十一月汽水に暗き穴並ぶ
小春日の三人が坐す長座布団
越智小泉
身勝手はほどほどにして金木犀
ロボットに歩幅のありて初しぐれ
マイナンバー持ちて出歩く神の留守
声揺らし紅葉の中バス曲る
*昨日上六句会のあったホテル・アウィーナ大阪のエントランス。
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