2017年1月2日月曜日

香天集1月1日 橋本惠美子、藤川美佐子、中濱信子ほか

1701香天集 岡田耕治 選

橋本恵美子
採血の音で始まる冬の朝
包帯に固定されたる冬薔薇
マスクする一塊の部長診
冬の日の木札となりぬ病舎跡

藤川美佐子
コスモスに沖より風の吹く日かな
独り住む里山に置き秋の色
それぞれの記憶のかたち菊花展
マスクして只一点を見つめおり

中濱信子
鰯雲校歌は反身で歌うもの
紅葉狩異国の言葉往き交いて
夜長しペン胼胝と言うほどもなし
焼芋や学級だよりに包まれて

浅海紀代子
擦れ違う稚児と目の合う聖夜の灯
亡き人はいつも微笑み冬すみれ
賑わいを忘れし通り冬の月
山茶花の散りて音無き日暮かな

村上青女
投錨の音響かせて紅葉山
山紅葉染まらない葉もここかしこ
厨窓に朝焼け満ちる冬至かな
少しだけ希望を託し冬の虹

浅野千代 
枯蓮を描けり自傷痕の上
枯蓮の池を覗いて行く人ら
ふくらはぎ押して去る猫冬ざるる
暖房や脳細胞が死ぬかんじ

森谷一成
対州のリアス海岸黄葉かな
竹敷の水門に逢て秋時雨
一海をつなぐ絶島いわし雲
立冬の航や指なき支配人

越智小泉
眼差の優しくありて鴨親子
湯に浮かぶ柚子の凹凸肌に触れ
己が影池面に預け山眠る
白菜は片手に重しやじろべえ
*玄関ドアのささやかな飾り。今年もよろしくお願いします。

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