香天集5月14日 岡田耕治 選
石井 冴
空腹の最も奥に蕨立つ
偶然の二回重なる桜鯛
永き日のことばを増やす車輪かな
いろいろな車輪が廻る夕桜
久堀博美
酒よりもあんパンにする春の宵
癒し湯に浮かぶ私の春の宵
リハビリの先生の鼻汗光る
寝たままの腰痛体操燕来る
中村静子
足形を砂に沈めて桜貝
布切れの匂いはじめる巣箱かな
白魚の喉通りゆく刹那にて
石段の人影として陽炎えり
砂山恵子
切り立ての髪をゆすりて草笛に
銀髪と茶髪とそろひ髪洗ふ
充分に沈みたる後浮いてこい
初夏のワインに透けて緑の葉
立花カズ子
花の下米寿卒寿が来ていたる
水面に近き一枝の残花かな
近木川の流れゆっくり風薫る
葉桜や琵琶湖支流へ風とゆく
中辻武男
川風を走る五百の鯉のぼり
沿道のつつじに目覚む人の声
白牡丹色冴え渡る夕べかな
擡げたる枇杷の実屁う紙袋
岡田ヨシ子
語らいはほらあれそれとシクラメン
紫陽花の雨を含みて光りけり
物忘れ近づいてくる夏の雲
美しき睫毛のままに友逝けり
*大阪教育大学柏原キャンパスの雨。
0 件のコメント:
コメントを投稿