2017年11月17日金曜日

紙に書く紙を重ねる月下かな 宇多喜代子

紙に書く紙を重ねる月下かな 宇多喜代子
「現代俳句」11月号・現代俳句協会創立70周年記念特大号。70頁に宇多さんは、「私は立句が作りたいですね」、「私は今、蛇笏や石鼎を読んでから寝ます」と発言しておられます。林誠司さんのブログ「俳句オデッセイ」には、「立句とは一句独立の凛然とした立姿の句を言う」とあります。この句は、そんな立姿を思わせる一句です。「紙に書く」ということが、新鮮な響きを持つようになりました。しかも、それを重ねていくことには、俳句を書き継いできたことへの肯定が伺えます。明かりを消して、蛇笏や石鼎が望んだであろう月を観ながら、また新しい紙を前にしている作者を想います。

*福島県只見町にて。

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