2017年12月3日日曜日

香天集12月3日 三好つや子、中嶋飛鳥、渡邉美保ほか

香天集12月3日 岡田耕治 選

三好つや子
反抗の頭がぬっと黒セーター
紙切れにつまずく男の十二月
冬蔓のどこを編んでも日の匂い
狐火のふっと市松人形の目

中嶋飛鳥
耳塞ぐ赤の帽子を編み上げる
白息や熱帯びてくる語り口
肩の手の有るか無きかに冬の虹
狐火に少し近付く唇よ

渡邉美保
着ぶくれて打ち解けられずゐるふたり
なんとなくすねてゐる母着ぶくれて
羽根布団鳥も樹木も覚める夜
焼りんご魔女の声音で読む童話

釜田きよ子
吊し柿おのれを磨く時間にて
月光に監視カメラの覗かれて
冬瓜の大小のありでもいらない
芋の露大きな夢の零れ落つ

澤本祐子
ふるさとの音を重ねて紅葉狩り
落ち葉踏むいつしか支え合う手なり
藁ぼっちしだいに影をつなぎ合う
冬日影爪切り終えし指十本

三好つや子
村中の手が動きだす稲穂波
知らぬ間に縮んだわたし麒麟草
あなどれぬ古事記の漫画きぬかつぎ
鵙日和ときどき迷子になる鋏

辻井こうめ
鳥海山の紅葉一気に人を呑む
木守柿宮澤賢治詩集静か
冬菜積む職場体験する一人
立ち居まで父に似てをり冬の虹

宮下揺子
暖冬異変だまし絵の前にいて
余生あとどれだけあると毛糸編む
柊の花パンドラの箱を閉ず
凝り性の遅れて来たる十三夜

北川柊斗
冬木立まことしやかに並びをり
枯葉道とび跳ねてゆく小犬にて
天体よりこぼれてきたる龍の玉
人体に関節多し冬の川

中濱信子
つばくらめ秋のつばめとなっており
菊花展丸き日差しを賜わりぬ
蕎麦の花項に風のきていたり
有り無しの風を捉えて萩の花

浅海紀代子
小春日の美容師ひとり客ひとり
幸せの形を描き野菊晴
冬迎う肩の力を抜いており
手に余る薬の嵩や冬の雨

大杉 衛
木枯をよぎる絶滅危惧種かな
灯台が冬の木となり立つ岬
人間という名のおわり煮凝りぬ
撃たれるかもしれぬ覚悟や鴨の陣

中濱信子
泡立草一直線に線路延び
垣根に陽もどっていたり水引草
蛇穴に入ると枕を高くして
曼珠沙華犬の甘噛み拒みけり

羽畑貫治
枯蓮上手に踏んで逃げ帰る
ピン球が届いていたり晦日蕎麦
硬い足炬燵に入れて告げんとす
水鳥の羽音を叩く冬の月

越智小泉
時雨おり無人の野菜売れ残り
回覧板届け山茶花浴びにけり
渡り鳥西の明りを追いて消え
湯豆腐の口をしばらくはひふへほ

村上青女
人形と見し槙の実や雨の後
島の猫のっそりといる石蕗の花
海峡は白波を立て秋の蝶
桟橋に見送っており十三夜



*神戸港。

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