2017年12月31日日曜日

香天集12月31日 渡邉美保、砂山恵子、久堀博美ほか

*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

香天集12月31日 岡田耕治 選

渡邉美保
海鳴りや布団の中にある昔
風邪兆す沓脱石をどけてより
霜晴や穂高連峰遭難碑

レノン忌の空の青さに開く窓

砂山恵子
毛糸編む私自身に戻るため
空き瓶を集める遊び風冴ゆる
貼りついた木の葉ひとつを裏返す
枯野から枯野へ渡る橋ひとつ

久堀博美
初時雨一人で行けるところまで
凩や睡眠薬の甘く溶け
車なき車庫に冬日の満ちきたる
粕汁の隠されている熱さかな

森谷一成
てのひらの海におぼれる開戦日
指に出会う八十八鍵六林男の忌
太公望のはらわたに入り薬喰
充血の女が眠りクリスマス

橋本惠美子
鳥渡るタンクローリーの発光
寒風を視つめていたり遠眼鏡
木枯や外れ馬券を散り散りに
フルフェイスの覚悟を固め冬の朝

大杉 衛
冬構え奥にかすかな波の音
白鯨も船長もみなばね仕掛け
方舟の上こそ枯野漂えり
手の届く棚には何もない師走

久堀博美
寒鴉水道管がむき出しに
神無月大きな雲が飛んでゆく
何時になく機嫌が良くて大海鼠
膝毛布腰まで包み志す

澤本祐子
人の世を高くしてあり松手入れ
湯に浮かぶ柚子胸元に近づきぬ
木漏れ日をすり抜けていく木の葉かな
戻り反故戻る音して十二月

釜田きよ子
青春の眼差しにして裸木は
数え日や二十四時間あるにはある
浮寝鳥ワルツを踊る夢を見て
不揃いも良し丸餅の自己主張

橋本惠美子
七回を跳んで捕まえ飛蝗かな
万年と言われ亀死す冬日向
海鳥の足首細し初時雨
祭笛肩で涙を拭いたる

安部礼子
雪見酒この足跡の埋まるまで
揺るることf分の1聖夜の灯
帰り花乙女に帰る約束す
つながってそれでもひとり雪螢

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