香天集1月28日 岡田耕治 選
谷川すみれ
深海の魚を目がけて雪解川
紅梅や指の先よりはじまりぬ
坐らねば他人にもどる桜餅
びっしりと桜蘂降る酸素減る
三好広一郎
マスクして顔のない忘れない顔
このおでん串がないねお家だから
人格はすべて眼に出て雪達磨
ふところに音楽のない聖夜かな
玉記 玉
寒昴一秒前はもう昔
水寒く石が育っていくことも
軽トラで来る初空とガスボンベ
寒紅かとも年輪の一条の
森谷一成
百円玉を珈琲に換え大旦
犬の仔に牽かれて淀の初景色
利潤率傾向的低下法則去年今年
子のほうが父よりも老い年の酒
橋爪隆子
心持ち素顔のままの初鏡
道頓堀にはみだすアジア二日はや
一月の我が運勢を立って読む
落葉散る水面を破り鯉の口
釜田きよ子
着ぶくれて反骨の胸失いぬ
幼子はななめに走り風花す
寒卵途方に暮れてしまいけり
眠るより考えること寒の鯉
北川柊斗
白濁の京の歴史や雑煮食ふ
幽界へ誘わるるゆめ林檎落つ
風花す平安神宮大鳥居
春隣バター溶けだすホットケーキ
木村博昭
秒針が分針を越え去年今年
天守より高きに脚を梯子乗
白鷺の白を極むる冬の川
樹には樹の温みのありて寒雀
坂原 梢
喜寿迎う男のための新日記
寄せ鍋の個性あふれるトークにて
年の市戸惑い笑うアジアかな
マラソンがひきずっていく叫び声
永田 文
どこまでが畑と思う初景色
外灯の光に舞うやぼたん雪
寒月をとらえ大樹の蔭すけり
座敷いま寒餅干すためにある
坂原 梢
リモコンが風呂を知らせて大旦
おみくじの凶を結びて雪の枝
寒餅や昭和の匂いしてきたる
入港のフェリーとともに初燕
越智小泉
雲流るままに輝き大旦
籾殻に埋まりおりぬ寒卵
波の上波が走れる鰤起し
冬薔薇見る人のまだ現れず
西嶋豊子
木枯に手押車のままならず
寒鯉や皆動かない時のくる
冬の月考えること半分に
年賀状一枚猫によみきかす
*岬町立岬中学校にて。
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