香天集6月10日 岡田耕治 選
中村静子
花筏合流の音していたる
銀髪となりたる友と新茶汲む
雨の香を抱きて放つ海芋かな
子燕の声に明るさ戻りけり
三好つや子
絵の具より這い出て朝の蛞蝓
白桃という水彩の白い闇
はつなつの蛇口が覗く洗面器
青空の青はのびしろ麦青む
宮下揺子
嗣治の絵から抜け出す恋の猫
山法師海の無い地で母になる
骨密度測り七十歳の夏
リラの雨秘密にしたい明日があり
橋爪隆子
気管支を青く染めゆく新茶かな
焼けし鯖皿に移りてじゅくじゅくと
三面鏡閉じて新樹を封じけり
血管のために水飲む柿若葉
藤川美佐子
夏草やどこからも風吹いてくる
ふるさとを出るに出られず油虫
人の名のすぐには出でず燕子花
右耳のかすかに遠し夏ゆうべ
羽畑貫治
高波の落差に遊び燕の子
早乙女の襷に匂う鳶の空
潮に乗り岸辺を囃す鰡の群
亀の子の山駆けおりる雨の中
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。
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