香天集6月24日 岡田耕治 選
三好広一郎
うすものやうでに時計のないひと夜
あん蜜やおとこふたりで筋肉で
ラブホテル一匹の蚊にふたりの血
扉押す押し返すのは五月闇
谷川すみれ
風が耳過ぎる音のみ空の秋
ひらがなのような人の背秋日傘
渾身や銀杏黄葉の起ちあがり
秋の夜本読む童女美しき
加地弘子
紫陽花の白き縁より別世界
夏の月離れて暮らす間にも
蟻地獄火口までゆき覗きけり
轟轟と滝の裏より滝をみる
橋本恵美子
青大将腕捲りしてやってくる
剪定の一枝を挿す鬼瓦
無人駅草刈り鎌を持つ女
青梅や隙間を満たす風のあり
澤本祐子
カステラにナイフの沈む走り梅雨
説明の数値の画面梅雨に入る
額の花暗き眼科を後にして
駄菓子屋に並ぶ自転車ソーダ水
辻井こうめ
滴りや長き連載コラム終ふ
蛍見の小形電灯蛍呼ぶ
青楓辻井伸行染みわたり
時を待つマリア灯籠木下闇
中濱信子
柏餅手に大相撲星取表
梅の雨ますます細くこけしの目
どくだみの空家に濃ゆく日のあたり
指差して守宮の腹のもも色に
中辻武男
雨笠や木ごと庇いしサクランボ
長雨の紫陽花老を和ませて
梅雨晴間沈む夕日に喚声が
梅雨の地震受くる電話にある温み
*昨日の上六句会、ホテルアウィーナ大阪にて。
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