2018年7月1日日曜日

香天集7月1日 石井冴、渡邉美保、北川柊斗ほか

香天集7月1日 岡田耕治 選

石井 冴
万緑や老婆が坐るくぼみあり
すれちがう刹那のずれてサングラス
地震あとの地面の茅の輪くぐりけり
シオトンボ瓦礫に長く伏せている

渡邉美保
短夜の掛軸を出る鯉二匹
梅雨深ししやがんで探すパスワード
円陣を組む九人と蟻二匹
甘酒やふるさとに鳴る波頭

北川柊斗
青芝をボールゆきかふ陰日向
大橋の擬宝珠の錆びも半夏かな
晨光や草のかげより黒揚羽
魂の浮き沈みする梅雨の闇

前塚嘉一
プールへの列眺めおり元教師
三日目をまだ夏草といる帰郷
紫陽花やドライフラワーなる命
六月や悲しき歌は明るうに

古澤かおる
沙羅咲いて新見南吉記念館
三回忌の孫ら十人梅雨畳
六月や法事の客の杖濡れて
青年に高く掲げし白日傘

木村博昭
千年の川の流れや小判草
筋少し歪みてそよぐ植田かな
翡翠に内緒話を盗まれる
青簾個人情報保護シール

安部礼子
泣砂の浜を晴らして雲の峰
廃屋の理由は知らず南風
思い出の樹幹の夏を抱いてみる
水たまり恐ろしきほど夏詰まる

越智小泉
親竹に添いて伸びゆく今年竹
夏蝶の速さの行方追いきれず
鴉啼くは何の前触れ青嵐
風の出て青田静かに波打てり



*関西大学梅田キャンパスにて。

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