2018年8月22日水曜日

ぎいと戸が開きやませが舌伸ばす 高野ムツオ

ぎいと戸が開きやませが舌伸ばす 高野ムツオ
「俳句四季」9月号。やませは、北海道や東北地方で夏に吹く冷たい風。「餓死風」とも呼ばれている。佐藤鬼房に「やませ来るいたちのやうにしなやかに」があり、師系にはやませを生き物としてとらえる風があるようだ。ムツオさんは、やませを伸びてくる「舌」と感じるという。この直感は、東北を生きるムツオさんならではのものだ。かつて鈴木六林男師は、作家の小川国夫さんのことを「あんなに苦労してる人はない」と評した。もちろん、日々の暮らしではなく、小川さんが書き継ぐ文章を読んでのこと。同じ意味で、ムツオさんほど苦労している俳人はないだろう。

*大阪教育大学柏原キャンパスの夏休み。

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