われいつか蟻に曳かれる夕山河 渡辺誠一郎
「小熊座」10月号。命には必ず終わりがあるということは分かっていても、つい今の暮らしが続いていくような感覚にとらわれてしまします。先日、名越康文さんの『どうせ死ぬのになぜ生きるのか 』を読みました。私は毎朝一番にベッドを整えるのですが、「どうせまた乱れるのになぜ毎朝ベッドメイクをするのか」と同じ問いではないかと、読みながら思っていました。誠一郎さんのこの一句は、更に大きく「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」に応えていると感じます。この命も、おおきくフェードアウトした「夕山河」の中の一つなのだよ。蟻が懸命に大きなものを運んでいるように、私も一日を懸命に生きて、そしてやがて蟻に運ばれていく、それでではないか、と。誠一郎さん、この地上のすべてが大いなる命なのですね。
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。
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