香天集11月18日 岡田耕治 選
谷川すみれ
誰もいない裸電球の炬燵
どんど火のどんどんのぼりゆきたるよ
裸木のそこは秘密の通る道
雪だるま裏にまわれば何もなし
三好広一郎
先代は何をしてきた蓮根掘る
曼珠沙華のような手紙これは母
草の実飛ぶ一途な色を次の世に
モナリザに八重歯とろろ汁好きそう
中嶋飛鳥
秋燕ところどころを投げキッス
冬ぬくし紙の飛行機膝に来て
木の実降る畏み畏みのくだり
行く秋やイニシャルのみにとどめおき
立花カズ子(11月)
宮川の石橋渡り初紅葉
ひと雨に桜紅葉の艶めきぬ
店先や色とりどりの木の葉降る
しぐるるや紅葉の渓を雲流れ
中嶋紀代子
冬瓜やいらなかったら捨ててねと
学校賞もらいし絵なり秋深む
焼芋とシナモンティーを含みけり
きよ姉ちゃんと呼ばれし頃や掘炬燵
中辻武男
遥かなる奥入瀬渓流忍ぶ秋
黐の実を狙いて鳥の声高し
車窓より叫び声あげ秋の山
晩秋の鴨整いし水にあり
立花カズ子(10月)
豊の秋雀追いやる力瘤
残る日を共に巻き込む秋すだれ
広がって渡って来たる刈田風
虫の音や傘寿の今もははを恋う
*岬町文化センターにて。
0 件のコメント:
コメントを投稿