香天集12月9日 岡田耕治選
渡邉美保
ポインセチアから尻取りを始めけり
木枯一号キューピーを横抱きに
枯蓮の先へ先へと行きたがる
牡蠣フライその言い分を聞いてゐる
三好つや子
冬の音探しに大工道具館
枯菊や手鏡ほどの小火だけど
牡蠣フライ若さむさぼる父と母
童顔の兵のくちびる冬苺
加地弘子
冬の蜂鈍き羽音を繰り返す
猪がふつうに橋を渡りおり
冬銀河乾きし靴の忘れられ
外灯の中を最もしぐれけり
橋本惠美子
朝寒し十年前と同じ服
トルソーの支柱現れ冬に入る
短日や踵の高い靴にする
縫い糸をカンとはじいて寒夜かな
中村静子
椋鳥を宿して樟の膨らみぬ
金賞の菊に集まる羽音かな
仲直りして鬼灯の首を揉む
掌に包む温もり雪蛍
坂原梢
乙女から先につまずき草紅葉
田の中の一軒に満つ冬日かな
媼二人犬を連れ合い小六月
冬帽子船の上から振られけり
宮下揺子
あっぱれな生き方秋の樹木希林
鶏頭を見て終焉に向かいけり
チェロを弾く大道芸やけやき散る
のどかとは思えぬ街の冬の虹
前塚かいち
十一月レンタル自転車は五時まで
琉球の朝顔の蔓切られゆく
オリーブの実は二十四の瞳かな
校門の閉められてよりオリオン座
羽畑貫治
ピン球や鈴なり光る山の柿
新海苔の流れて早し里岬
杖たたき橋を渡れば雀蜂
わが死後はここがよかろう野菊山
村上青女
いただきし栗きんとんの深き夜
いつまでも毛虫を育て酔芙蓉
紅葉の初宮参り多度大社
賑やかにグランドゴルフしぐれ来る
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。
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