2019年1月20日日曜日

香天集1月20日 中嶋飛鳥、三好広一郎、砂山恵子ほか

香天集1月20日 岡田耕治 選

中嶋 飛鳥
ここからは死角となりて大根干す
遠く来て胸に収まる年の鐘
冬菊の地へ傾きて地へ触れず
冬の霧胸に来てすぐ衰える

三好広一郎
元日やそろばんの一弾く音
新品の膝小僧みせ雑煮喰う
湯豆腐や白には白の重さあり
煮凝りや過去はあまねく真っ平

砂山恵子
何もかも揃ひたる家炬燵無し
冬の鹿ただ一点を見据えをり
一陣の風に影揺れ水仙花
竹馬やひとりひとりに空のあり

神谷曜子
平成が去る冬帽子の軽さで
入浴剤の泡のつぶやき冬至の夜
霜の夜宝石箱に仕舞いけり
尼寺の冬陽踏むことためらいぬ

橋本惠美子
冬に入る脂肪の厚さ測りいて
冬日向掃除機と猫充電す
ダ・ヴィンチの一ミリを観るマスクかな
皸が同じミスしてキーボード

加地弘子
登り来て被り直せり冬帽子
枯蟷螂きのうまで居た場所やさし
何かあったらなんて言うなよ冬の星
外に出て初蠅に合う穏やかさ

古澤かおる
お不動の急な階段淑気満つ
喰積や母は食卓拭いてばかり
宝船寄港しておりクレーター
人日の手首を使いフライパン

永田 文
元朝やいまだ拙き正信偈
灼な寒九の水や腑に沁みる
共に食ぶ妣にならいしなずな粥
鈍色の海ごとうねる能登の冬

中辻武男
筆初めの子ら眺めいて「亥の絵」
寒稽古曇天翔ける鴨の数
待っており成人の日の晴れ着姿
寄せ植の早梅今が盛りなり
*南海難波駅にて。

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