2019年2月10日日曜日

たぐひなき海鳴りとなり古日記 櫂 未知子

たぐひなき海鳴りとなり古日記 櫂 未知子
「俳句」二月号。新しい日記を買ってくると、これまで使っていた日記が急に古くなったように感じられる。そしてそこには、今年一年の自分の生の有り様がむき出しになっている。今まで聞いたことのないような、激しい海鳴りが朝から続いている。それは、古日記の生の相を浮き立たせたかと思うと、引いていく波のように沈めてゆく。そしてまた、浮き立たせてくるのだ。何も書かれていない新日記の静かさが、この古日記が鳴らす海鳴りを際立たせているようだ。
*岬町小島にて。

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