三好つや子
春の校庭羽ばたきそうな紙片あり
柔らかなもがきを抱え春キャベツ
夕ざくら降車ボタンを押し忘れ
占いの館はこちらチューリップ
中村静子
相席のボックス席の余寒顔
ともし火の雛の黒髪濡れてあり
スクーターの風受けてゆく茅花かな
春寒の鯉が腹打つ鏡石
加地弘子
春耕の二人交互に水を飲む
大切な用事につづき春一番
春の月ともに湯舟に浮きいたる
春の鳥遅く来ている休みの日
神谷曜子
水木しげるの妖怪辞典春の昼
谷合の梅林空のおりてくる
ヨシ焼きの炎二手に走りゆく
紫雲英田を後手でゆく者のあり
永田 文
球児いま芝生の春を駆けゆけり
単線の花菜明りを始発駅
木に触るる芽立の匂う日差かな
日を溜めて梢の芽吹き天つ風
中辻武男
富士山の裾を隠して花菜かな
白無垢を羽織る姿の花盛り
桃の花見分け摘み取る笑みのあり
花よりも人に寄り付く春の蝶
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