2019年6月9日日曜日

「トマト」15句 岡田耕治

トマト  岡田耕治

走り梅雨箱の中にも箱を貯め
もてなしの土から育つトマトかな
ざる蕎麦の大盛に汁散らしけり
深く被る洗い立てなる夏帽子
夏の月いつもの路に辿り着く
荷車の段差にかかる薄暑かな
紫陽花に近く命を確かめる
近江から人の来ている額の花
空豆をむいて呼吸を整える
先生の大きな眼鏡梅雨に入る
注意深く起き上がりたる裸かな
用意した言葉を離れ初蛍
雨音の裏に張りつき蝸牛
瀧壺や短き拍手送り合い
一寸の闇を分け合う日傘かな
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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