柴田亨
言葉持つ人の悲しみそれを抱く
春を送る大あくびする猫といて
とりどりの言の葉集い風薫る
石仏羽虫打つ手を合わせたる
渡邉美保
先生の書斎明るし夜の新樹
色のなきあぢさゐに水誕生日
青枇杷や縁側といううすみどり
十薬の株ごといらぬかと問はれ
澤本祐子
ひとひらのあと花びらのとめどなき
薫風がページを散らすミステリー
白牡丹咲き満つ白のあふれたり
夏燕子の手にわたる母子手帳
中濱信子
川の面や五月の風の吹いている
川幅の大空のあり鯉幟
鯉幟名の有る山を従えて
薔薇の名を聞いてよりなお慈しみ
浅海紀代子
春立ちぬ無住寺の門開かれて
紫雲英田の一枚が見え走り出す
法然忌人に遅れて木魚打つ
法談や五月の風に身を委せ
釜田きよ子
今生は守宮で終るそれも良し
この声を大切にして牛蛙
スカートを久しくはかず踊子草
どくだみを灯し日暮を明るくす
中嶋紀代子
三センチほどの蜥蜴の目玉かな
芍薬の伸びて蕾を揺らしけり
俳句誌の作者気になる春の風
夏の草仰山あって迷い出す
*大阪市中央区にて。
0 件のコメント:
コメントを投稿