渡邉美保
弟をだまらせてゐるさくらんぼ
合歓の花見上げて深き息ひとつ
夏至夕べつつけば丸くなる虫と
物語ねずみ花火のあとで聞く
森谷一成
大の字に靡かせており青嵐
黒髪を開(はだ)けてみせる青嵐
わたしにはあかんべいなり花菖蒲
青梅雨の天上にある潦
前塚かいち
李喰ふ早口言葉言へぬ子も
初夏や戦後の続く六林男邸
くちなしの香や戦没者追悼す
黴の世の黴びぬ言葉を探しをり
夏 礼子
幼子の丸描く速さ時の日へ
梅雨晴間宇宙線とはどのあたり
末っ子の甘え上手や花ざくろ
聞き役の昼酒しんと芙美子の忌
宮下揺子
初夏の風子どもが走る水面より
阿弥陀沙羅の花から拝顔す
マネキンの腕をはずして夏衣
人拒むかに初夏の観覧車
河野宗子
紫陽花や昭和のボタン針箱に
梅雨晴間近道をする友の家
赤き実を一つつけたるざくろかな
入梅や洗ひたてたる藍のれん
朝岡洋子
朽すすむ新玉葱の小屋のあり
ボンネットの雨粒膨れ梅雨に入る
群青に水茄子漬かり茶粥煮る
観音の淡路が見えて五月晴
岡田ヨシ子
うぐいすやお地蔵さまのご命日
蛸を待つ岩の隙間の波静か
四階へ転居の汗を流しけり
天辺の抜け毛を隠し夏帽子
大阪教育大学柏原キャンパスにて。
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