2019年8月25日日曜日

香天集8月25日 夏礼子、石井冴、谷川すみれ、辻井こうめ他

香天集8月25日 岡田耕治 選

夏 礼子
深読みは苦手のままに冷し酒
向き合いし黙をくづしてかき氷
一本の鉛筆がある敗戦日
秋の虹もう追いかけるもののなし

石井 冴
プチトマト左の頬を出て来ない
黒麦酒ときに作法を変えてみる
表札のふたつを並べ水を打つ
天井に空が来ている昼寝覚

谷川すみれ
露が露寄りて転がる着地する
留守番や赤い小菊の夜が明けて
つぎつぎと黄葉を離す銀杏かな
九月去る自由な雲の形にて

辻井こうめ
白南風やキシキシキシと踏み洗ふ
百物語耳の手を少し開け
帰り来る彼の世の際を氷水
凭り掛かるものあらば凭る炎暑かな

橋本惠美子
にぎやかな延長保育豆ご飯
黒南風や要塞跡の隠れんぼ
籐寝椅子免許を返す背を乗せて
太陽をくるくる回す日傘かな

木村博昭
朗らかにいのち滅びてゆく極暑
美しき筆跡に会い夏料理
向日葵の裏側にある朝鮮史
八月の誰も流れていない川

古澤かおる
箱庭の水際に置き朱の鳥居
盆用意嬰児泣くにまかせたり
桑の実や里の土橋の向う側
私だけ瓢の種を授かりぬ

河野宗子
オルガンへ風の通いてアマリリス
夏の夜や燃ゆるフランベシェフの指
西瓜割大ちゃんの棒迷い出す
イヤリング片方夫の墓のそば

正木かおる
右中間抜けて二塁を蹴りゆけり
海風が渡るスウィング青蜜柑
カナブンや何を背負ひて飛び回る
わたくしは此処にいますと旱星

羽畑貫治
休暇明スカートの裾ひるがえる
一つずつ文句を並べ鰯干す
先ず妻に敬老の日の缶ビール
追われ来る入道雲の諸手かな

櫻淵陽子
定まらぬ心のありてハンモック
夏の宵異なる道を歩みけり
蝉時雨届かぬ声を聴くことに
炎昼や光の壁が傾いて

永田 文
「さようなら」また合えるよね八月に
近道は日の斑がおどろ木下闇
追いかけてはたいていたり天花粉
秋立つや素湯に梅干一つ入れ

中辻武男
永らえて土用を越えし夕餉かな
塩加減気にしていたり子の西瓜
夕暮の風鈴の音の届きけり
盆踊自重促す風雨にて
*上六句会場・ホテルアウィーナ大阪にて。

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