2020年6月21日日曜日

香天集6月21日 加地弘子、夏礼子、北村和美ほか

香天集6月21日 岡田耕治 選

加地弘子
郭公の初めて人に会う日なり
老鶯の合わせてくれる速さかな
海色の暈しを入れて夏暖簾
木蓮の芽につつかれているガラス

夏 礼子
葉桜の真昼の暗さひとり居る
短夜の書棚から出て天金書
梅雨の月母の手紙を捨てられず
コロナ禍の薔薇に棘ある安堵かな

北村和美(6月)
白南風や半透明の声になり
階段の二段飛ばしの風薫る
口ぐせは「あのね」両手にサクランボ
青嵐風の重さを測りけり

松田和子
蜘蛛の囲の視野から雨の上りけり
代掻の牛がときどき白目むく
赤い橋渡り親子の夏帽子
夕風の鳰の浮巣を眠りおり
 
嶋田 靜
麦秋や赤毛のアンの髪の色
寝つかれぬ夜を鎮まり春灯
石楠花や廃鉱の空の澄みわたり
植えかえし昨日の苗に走り雨

北村和美(5月)
花水木知らぬ名の文鋏入る
新緑の風吹く朝のスクワット
声揃え泣いてもいいよ猫の恋
飛び越える第四の壁柏餅

小島 守
梅雨の傘カラオケを断ち酒を断ち
落ちゆくままにアイスコーヒーのミルク
陰を持つ西日の中のタワービル
サングラス敵を定めていたりけり

岡田ヨシ子
訪れる人がなくなり夏来たる
夏帽子忘れ太陽浴びんとす
冷素麺学びし友の懐かしく
島根より届きしちまき美しく

萱村 環
すみれ待つ所へ犬と散歩する
雨音に合わせぽりぽり豆の菓子
あじさいのまんまる頭礼をして
ばあばから箱詰めの菓子梅雨上がる

*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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