香天集6月14日 岡田耕治 選
渡邉美保
母乗せて退屈さうなハンモック
若葉風に三年寝太郎の気分
花魁草髪切って肩広くなる
上巻をとばし下巻へ新樹の夜
三好つや子
道おしえ分散登校はじまりぬ
仙骨を意識しているアマリリス
傾聴のかたちの耳を蝸牛
真っすぐに反るということ青胡瓜
砂山恵子
暑き日やメトロノームの尖りたる
着信に今無き名前ほたるの夜
風鈴の後のしじまよ地下の街
直線を忘れし真昼さるすべり
河野宗子
麻蚊帳を出して昭和をたたみけり
この曲をきいているらし夏燕
イタリアンハーブの夏をたのしめり
リハビリの足裏を向け夏の空
澤本祐子
ゆっくりと暮れゆくところ桐の花
柿若葉いまふるさとに生家なし
くるぶしを運んでゆけり蕨摘み
梅の実の一粒ずつの産毛かな
神谷曜子
風強し抱卵中のコウノトリ
ウィルスの潜みし町の風薫る
ささくれし地球から見え梅雨の星
清張の列車の音の昼寝覚
堀川比呂志
四字熟語並べ宇宙の果てに出る
玉葱の皺はみ出していて五月
色置けば皆散り散りに春の海
高炉の火空の真ん中だけ焦がし
宮下揺子
コロナには紫外線良しジギタリス
二つこと一緒に済ます半夏生
靴紐のほどけやすき日夏蓬
パンケーキうまく焼けたら夏がきた
中辻武男
頬笑みて人と牡丹と和みけり
曇天を日傘で庇う人の波
早やばやと空蝉みつく声のあり
池の樋を抜く日ぞ近し耕運機
櫻井元晴
音聞かせうまいでという西瓜売
初物の豌豆飯や仏前へ
パンツ下げヘソ出し子らの夏の海
パッチ履き暑い暑いと言い合えり
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。
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