籐椅子や心のままに求めたる 耕治
牧内 登志雄
「心のままに」籐椅子に身体を預ける心地よさ。都の職員だった父は時に狭い部屋に、分不相応ともいうべき大きな買い物をしてきた。子供心に覚えてるのが大きな電蓄。初めて聴いたレコードはハリー・ベラフォンテの「バナナボート」だった。
やがて、レコードを聴くために買ってきたのが、これまた大きな籐椅子。子供には大きすぎる籐椅子に座ると、ギシと軋む音とかすかな煙草の匂い。そんな籐椅子でベラフォンテの「ダニーボーイ」や「ハヴァナギラ」を聴いて、少し大人の気分になった子供の頃を思い出した。
十河 智
「心のままに」この句の焦点はここにあるようです。うちの祖父母の家にも縁側に使い古して少し破れかけた籐椅子がありました。祖父は座布団にあぐら、祖母がよく籐椅子に凭れ掛かっていました。「心のままに」座し、立ち上がるのも、「心のままに」でした。
「求めたる」心具合、気分が籐椅子を求めていると、そして安心を得たと解釈しました。
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