2021年6月20日日曜日

香天集6月20日 安田中彦、三好広一郎、石井冴、木村博昭ほか

香天集6月20日 岡田耕治 選

安田中彦
スケッチによろしき峰と雲の峰
往生の際より羽抜鳥走る
蛍火に囲まれてゐて赦されず
あをあをとプールからこゑしてゐたり

三好広一郎
レシートのこんなに長いキャンプかな
水を聴き水遥かなり竹夫人
蛞蝓の遺言一行光沢す
父さんを犯人と思う網戸かな

石井 冴
燕子花しゃがんだままで長く居る
なめくじらやはり光を求めけり
部屋という部屋に椅子ある団扇かな
どくだみをかき分けてゆく生家まで

木村博昭
新聞をひらく楽しみ鯉のぼり
どの道も都に通ず花茨
押印にこだわる人の半ズボン
冷そうめん大黒柱光りたる

宮下揺子
ぶらんこの風のへこみに腰掛ける
田水張る赤き鉄扉の新しき
今朝のこともう忘れてる雨蛙
老夫婦離れてくぐる茅の輪かな

釜田きよ子
蜘蛛の囲の職人技を思いけり
昨日とは意見の違うアマリリス
吾も蛇も出会い頭という縁
あめんぼう光かきわけ掻き分けて

神谷曜子
憲法記念日カリカリにパンを焼く
アルバムの家族を開き新樹光
著莪の花謎を秘めたる森の風
鶯や出遅れていることのあり

古澤かおる
弟に白髪の覗く麦藁帽
長靴に猫の隠れる五月雨
戻り梅雨フリーダイヤルの着信
睡蓮や軋みつづける父の椅子

牧内登志雄
バブリーな女の匂い夏帽子
麦秋や山越えてゆく波のあり
たつぷんと水の惑星金魚玉
ソーダ水飮めば初戀地獄變
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

0 件のコメント:

コメントを投稿