香天集5月30日 岡田耕治 選
辻井こうめ
極上のみどりそれぞれ五月来る
花桐や遺りし母の一張羅
麦笛や逢ひたい人に逢ひにゆく
燃料を売る古民家の諸葛菜
渡邉美保
手囲いのはえとりぐもをころがせり
青梅煮る火を細うして紙の蓋
ペン皿に鉛筆並べ新樹の夜
実桜に右手汚してしまひけり
森谷一成
跼蹐の眸にふれる蝶の息
蹠と尻いっぱいに競漕す
競漕の声一斉に点滅す
吹奏のぽつんぽつんと春の暮
中濱信子(5月)
小手毱や遊び相手の風きえて
柿若葉女すばやく隠れけり
手のひらに使う包丁春嵐
筍や列島強く吹かれいる
中濱信子(4月)
朧月仕切りの粗き露天風呂
頬杖をつけば桜の揺れはじむ
初蝶やピアノ塾より蝶ちょ蝶ちょ
葱坊主納得のゆく丸さです
楽沙千子
太子像夏帽を脱ぎ真向かいぬ
声変わりして入学の知らせ来る
飽食に坑していたり土筆飯
終点とする囀の雑木林
永田 文
水の里山毛欅の若葉は水しぶく
借景は葉桜として山に帰す
両の手に抱いてあふれる牡丹かな
花びらの撓みに蝶の翅やすめ
中辻武男
冬麗の富士に教わる卒路かな
冬の旅吾子の弁当味わいぬ
マスクして車外の景色身にしみる
生き尽くし敬を忘れぬ吾が命
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