2021年6月27日日曜日

香天集6月27日 渡邉美保、加地弘子、釜田きよ子ほか

香天集6月27日 岡田耕治 選

渡邉美保
集まって穴を見てゐる梅雨晴間
干草の香に包まるる一夜かな
実桜や死者百人の空見上ぐ
幼鳥のはばたく構へ大南風

加地弘子
ジャスミンが静かに窓を開ける夜
置いてきた四ひらのことを想いおり
擽られ死ぬほど笑った父の日よ
次の方と呼ばれて進む青すすき

釜田きよ子 
茄子の花人を疑うこと知らず
父の日や瞼の父がキセル打つ
未来より来た青年の夏羽織
植田苗少しおどおどしておりぬ

楽沙千子
そこはかとインクの匂う若葉かな
斎場を出て新緑の息深し
沙羅の花子の焼香に座のなごみ
学童の姿は見えず菖蒲園

北村和美(6月)
うすき風籐椅子の脚伸びてくる
雨あがりズックの先に風薫る
白南風や紙飛行機の落下点
円陣の顔つぎつぎと蚊に刺され

松田和子
黒南風や漁船遥かに見えはじむ
教会の声の響きよ田植笠
仏法僧遠くから風届きけり
鵜飼の火待つ目が光る籠の中

北村和美(5月)
肩越しにしずくを受けて花水木
カーネーションホットココアをゆっくりと
くちなしの花びら満ちる朝のこと
地車の冒険を着る法被かな

永田 文
はや風の棲みて植田を揺れ動く
若楓ひかりのこぼる石山寺
地方紙を濡らし筍届きけり
ガタピシャとにぎやかになり梅雨の朝

藪内静枝
御通りと悠然として揚羽過ぐ
柘植の木と軒のつながり蜘蛛の糸
川岸に上がれば白き風薄暑
非通知の着信二件梅雨の雷
*大阪市扇町公園にて。
 

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