2021年7月18日日曜日

香天集7月18日 玉記玉、三好広一郎、砂山恵子、加地弘子ほか

香天集7月18日 岡田耕治 選

玉記玉
昨日より明日よりブルーソーダ水
物語となるまで病葉を拾う
夕立に倦んでこの世の注射針
靴を履く生きものであり原爆忌

三好広一郎
空色も水色もなく涼しけり
永遠という色あるか草の露
炎天下イヤホンなしで歩けない
手の置き場どうしよもない水着かな

砂山恵子
暗闇の重力集ひ甲虫
夕凪や大きなものに塞がれて
空蝉をしまうたままの宝箱
ヒトといふ水へ行くもの背泳ぎす

加地弘子
草いきれ息を殺して鬼が来る
片陰の車体一列静かなり
ゴム長を濡らしてしまう蛇苺
生徒らの顔もろともの清水かな

木村博昭
梅雨空へ指三本を掲げけり
あじさいや夜の静寂を饒舌に
少年の居場所を探す草いきれ
噴水の少し乱れて風を呼ぶ

砂山恵子
蝙蝠や佳境に入るフラメンコ
油照誰も悪くは無いけれど
この夜を海ほおづきも開くのか
玄関にパスポート置き胡瓜取る

神谷曜子
夏雲までアメリカだった昭和の子
営業の仕事が終わり梅雨の星
雨蛙四コマ漫画跳び出せり
多田羅沼の水蓮となり空を見る

古澤かおる
濡れている犬の眼と合う夕端居
蓮開く修繕終えし寺の堀
いつもいる守宮の窓の湿りかな
がやがやと大賀ハスまで来て止まる
婆さんの肩の丸みよ水まんじゅう

小﨑ひろ子
雨間に靴履き替える文月か
ユニコーン目覚めて青き牽牛花
ウイルスの間よこたう天の川
話法あり風船葛の咲く窓辺

松田和子
月涼し友から便り五年ぶり
玉葱の今をかじれる甘味かな
夏帯の白を着こなすおばあちゃん
水団扇静かによぎる舟遊び

櫻淵陽子
祖母を包む五十余りの庭の薔薇
「ご安全に」丸亀団扇仰ぎつつ
小さき手を引いて茅の輪を潜りけり
香水や髪をほどける時の来て
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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