2021年7月17日土曜日

真桑瓜 岡田耕治

梅雨深しこの一冊を選びいて
牛の目に匂いはじめる夏の草
吊橋の夏をゆっくり早く渡る
紙で切る指の血を吸い朝曇
飛んで来し力を逃しあめんぼう
失いし人を着ており麻衣
素麺の包みを破ることにする
荷車の復りを弾み芥子の花
空腹の胸に満たせる若葉かな
冷蔵庫久方ぶりの顔覗き
おのずからここに移りし空蝉よ
花ユッカ空想に入る手がかりに
受け入れる前に受け取り真桑瓜
人生で最もでかい雷だ
学校を休む日のあり雲の峰
【鑑賞】受け入れる前に受け取り真桑瓜  耕治

玉記 玉
 「いえいえそんな立派な真桑瓜頂くわけには、、、」と言いながら、手は当然のように受け取ってしまった。真桑瓜でこその質感、重たさなどが抜群!

桑本 栄太郎
 「受け入れる前」とはどのような状態でしょう?恐らく知人の方よりいきなり、「ほら岡田さん!うちで生ったの!持って帰って!」と、美味しそうな真桑瓜を頂いたものと拝察いたしました。思いがけない嬉しさのようですね!!。

星野 早苗
 まず受けとらされるんですね。私も立派な利尻昆布を大量に戴いたことがあります。玄関のドア開けた途端手渡されました。もう受けとった以上、返すわけにはいきません。大きくて甘い自慢のマクワウリだったのだと思います。

大津留 直
 「愛される」とはこのようなことかと、思わず唸ってしまいました。われわれは、受け入れるかどうかと考える以前に、すでに、天地の愛を受け取っているのかもしれません。真桑瓜の大きさを想像させる句です。

十河 智
 私は真桑瓜大好きです、最近売ってないのが残念なので、羨ましいです。子供の頃冷蔵庫に切って冷やしていれば、幸せに感じていました。
 何か分からずに投げられたものを反射的に受け取る。俳句は、切れに一瞬の戸惑いと安堵の境目を表現していて、とても楽しい一句です。

仲 寒蝉
 面白い表現です。受け容れる間もなく、ということか、或いは「取り敢えずもらっておこう」ということでしょうか。

大関博美
 ご近所さんが、「今年は良くできたのよ。」とにこにこしながら渡された真桑瓜。いやいやと辞退のことばを考えてまごまごしてる所から、手には既に真桑瓜が。こんな時、私物欲しそうだったかしら?と考えが過る。ご近所づきあいのおすそ分け、嬉しさと微笑ましさの反面、難しさを感じてしまうのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿