2021年8月8日日曜日

香天集8月8日 柴田亨、三好つや子、久堀博美、中嶋飛鳥ほか

香天集8月8日 岡田耕治 選

柴田享
列島に二つのひとみ爆心地
見返しは切り取られたり師の句集
秒針の一音高く夏来る
アブラゼミ遺骸を土に置き返す

三好つや子
浮き人形明るいほうにある死角
嚙みますの立札かかる鱧売場
無花果に仮想通貨の匂いあり
青栗のこつんと青い黙秘かな

久堀博美
一瞬の途中は長し星明り
初対面なれど弾めるビールかな
霊迎う終のまなざしまなぶたに
葛咲くやひと世の悔いの残りたる

中嶋飛鳥
朝曇り借り物の杖手に馴染み
山彦のもどるを待ちて汗入れる
待ち受ける肩先かすめ揚羽蝶
父祖の地の数字の桁や秋隣る

牧内登志雄
草臥れし白衣の襟の秋日影
つくづくと男と女カンナ咲く
狐花ここを左に鎮守まで
今生の始末を想い秋の蝉

河野宗子
内面と向きあっており夏の月
捩花ほどよく小花のぼりたる
打水を飛ばして浮かぶ友の顔
息をつぎ鳴いては止まる蝉の声

櫻淵陽子
夏の蝶太陽のまま輝けり
髪ほどき香水少しほのめかす
警戒を解除している夏帽子
天の川余生へ橋をかけており

田中仁美
夏帽子亡き父と行く軽井沢
やぎ二匹夏草食べる散歩かな
紫陽花の前に並びて烏骨鶏
帰りゆく背中に蝉を受けながら
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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