香天集9月12日 岡田耕治 選
柴田亨
泥濘がそれぞれ掴み秋の空
食卓にシャガールの空黒葡萄
何処へと問うクマゼミの路上かな
寄る辺なきものらといたり涼新た
三好つや子
少年にたてがみの日々夏山河
短夜の夢に忘れる桃の種
妄想を宿しておりぬ金魚鉢
人肌にもどる鉄棒夜の秋
宮下揺子
緑陰に人の集まり独りなり
夏の月なかなか効かぬ入眠剤
「じゃあ、また」が永遠の別れよ仏桑花
掛け声を自分にかける残暑かな
堀川比呂志
水打てば水ひかりたる点字版
風薫るひとりがいればひとりの日
切れ切れにごめんごめんと盆太鼓
見えるとは見えないことと百日紅
牧内登志雄
月明の影踏み遊ぶ女下駄
桃食らふ思ひのほかに硬き尻
流れ星つなぎて綴るラブレター
三日月や二十歳の愛の形して
岡田ヨシ子
汗の身に浮かべて来たる句を書けり
顔を見ず交わすひと言秋簾
赤蜻蛉シルバーカーを鳴らしゆく
ガラス戸に替えて障子を入れる老い
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