香天集9月5日 岡田耕治 選
玉記玉
すれ違う瞳は露草のブルー
オルガンとなりたくて行く薄原
玉黍の月を充填する頃か
夏惜しむフォスターを吹く唇も
夏 礼子
草いきれ背中に何か貼りつきぬ
夜の秋ベビーカステラ匂いくる
指揮官はこの木のあたりつくつくし
秋の空今日からできること探す
渡邉美保
背開きの魚干す母の晩夏かな
夜の秋キウイの種を噛みあてて
白桃のきれいに剥けてすぐ錆びて
鰡飛ぶや突堤までも犬を連れ
久堀博美
糸くずのような雲浮く花カンナ
素描画の馬の眼に秋宿る
残照を余さず畳み花木槿
箱詰めの花野のひかり届きけり
辻井こうめ
干物焼く匂ひのまぎる大暑かな
炎天のスケートボードの快感
君付けに呼びし人逝く夏の果
生命線伸びよと描く百日紅
前塚かいち
さびしさをマスクに包み雲の峰
機嫌よく老いてゆくなり酔芙蓉
迷いある喉を越したり冷素麵
八月の悲鳴となりぬ腰の骨
浅海紀代子
青田風招き入れたる記憶あり
夏草の好き放題を許しけり
汗を拭き営業マンの顔になる
いつ来ても施錠せぬ家百日草
河野宗子
バラ香る根元二本の草を引き
百日紅友の言葉を保ちおり
雷鳴の鳴り止まぬ夜を捜しけり
力入れ蚊を落としたり君が腕
楽沙千子
こおろぎや人の気配を察知して
飽食に不足のなくて稲の花
校門を走り出したり日雷
父の彫る菩薩奉納魂祭
田中仁美
スマートフォン打ち上げ花火拡散す
水を出てパンを欲しがる亀の子よ
蝉しぐれ時の止まりし同窓生
扇風機顔を近づけ声変わる
垣内孝雄
夜の秋線香ともる仏の間
この路地の奥に見え出しカンナの緋
ふくよかな牛の乳房よ秋の蝶
案内せる母鎌倉の秋のこゑ
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