2021年10月10日日曜日

香天集10月10日 柴田亨、釜田きよ子、三好つや子、古澤かおる他

香天集10月10日 岡田耕治 選

柴田亨
うろこ雲空いっぱいの微炭酸
定めあるものらといたり風の色
我がことを語り始める露の宿
そこここに白布に抱かれ十三夜

釜田きよ子
月明り家出の犬を連れ帰る
今朝の秋急に畳を拭きたくなる
曼珠沙華咲いてる限り胸騒ぎ
ばった飛び世界は実に広かった

三好つや子
鬼やんま弱気な風を裏返す
鼻筋のきれいな秋の風であり
ノンレムの私を濾過し虫の声
秋蝶やふいに尿意を連れてくる

古澤かおる
今年米岡山米と大書きに
天高し半日あれば思い出す
秋の蚊を仕留め損ねし両手かな
一献の作州弁と後の月

北村和美
しあわせという字を見つけ秋の空
秋夕焼腹這いでゆくすべり台
立待ちや盃の音かさなりて
呼び声の混み合ってくる秋刀魚かな

牧内登志雄
マネキンの男と女そぞろ寒
捨て台詞拾つてゐたり秋灯
銀杏を拾う媼の赤き爪
棄ててある故郷はるか零余子飯

岡田ヨシ子
朝寒し電子レンジの有り難し
大根蒔く九十歳の誕生日
彼岸花見て見てと言う送迎車
花畑脳体操のメモを出す
大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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