2021年10月17日日曜日

香天集10月17日 木村博昭、神谷曜子、三好広一郎、砂山恵子ほか

香天集10月17日 岡田耕治 選

木村博昭
寝そびれて私が二人居る良夜
赤とんぼ大人になって悔いている
芒原そのまま帰らざる者よ
歩くほど思いに耽り柿の秋

神谷曜子
低く来て行き場を探す秋あかね
薄羽かげろう過去を問わないことにする
カフェバーに並ぶ骨董らの秋思
今からでも良い赤トンボになろう

三好広一郎
来し方を染めゆく秋や九十九折り
適当に切り適当に余る秋
笑うほど止まらぬ泪枯れすすき
色なき風残りの明日を逆算す

砂山恵子
後の月取っ手失せたるマグカップ
十月や赤銅色の町の色
秋風や栞の取れし文庫本
左手は物言はぬ腕秋の暮

宮下揺子
パスケース紐長くする震災忌
足跡を辿る晩夏の資料館
晩夏光草の匂いの湿布貼る
眠るにも力が要りぬちちろ虫

河野宗子
糸瓜水一滴を待つ無心にて
マスカット一粒ずつの至福かな
月光の勝手口より亡き母来
人が来て時早くなる秋の暮

田中仁美
こおろぎを触ってみてと差し出され
富良野から届くボトルのラベンダー
カーテンを揺らす眠りよ秋の声
渋柿を焼酎につけよく笑う

堀川比呂志
銀杏の落下未来は青い日々
微積分してもこの夏ややこしき
秋天の溜りアスファルトの凹み
発想やレモンの青に転換す

永田 文
水音の鎮もってあり初紅葉
初紅葉孫の婚約との報せ
何処でも水引草は野の花よ
葡萄棚出てより空の青さかな
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。


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